夢判断40「運針練習」

  
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運針練習



yuri 様
29歳 女性 医療機関の事務職
タイトル/「運針練習」

【 夢の内容 】
1)私は前々職の和裁の会社で一生懸命、運針練習をしている。
白いさらしに黒の糸で真っ直ぐ縫えるようにする練習。 運針練習の絵
近くに、今働いている職場の新しく入ってきたNさんがいて、その人に負けたくないと私は運針練習をがんばっていた。
縫い目は不揃いだったけど、結構真っ直ぐ縫えていると思った。
周りには、当時の職場の先輩のUさん、Aさん、Yさんらがいた。
「Oさんは、私がいた頃は、Tシャツにジーパンのことが多かったけど、ブーツが似合いそうなおしゃれな服装をしていて大人の女性という感じになっているな」
と思う。

2)当時の職場の先輩のUさんが
「始めたばかりの今はしんどいけど、だんだん楽になってくるから」
というようなことを私に話す。
私は泣かないように堪えるけど、涙があふれる。

3)私は、紫色の生地の長襦袢という着物の中に着る下着のような物の袖を縫っている。
「糸の色が生地に対して薄すぎて合わないかな?」
と縫ってから思う。
でも、縫い目は外からは分からないので、虫留めという糸でする外からよく見えるところだけ変えようか迷う。
糸の色の選び方をちゃんと教えてもらってなかったなと思う。
Yさんという先輩に聞こうかなと思う。

鈴木めいや

ご連絡を頂きましてありがとうございます。
鈴木めいやです。
お会計の確認は済ませておりますので、早速ですが送って頂いた「運針練習」の夢解釈をはじめさせて頂きます。

そのために、少しだけ、集合無意識という概念について簡単に説明しておきます。
心理学用語辞典「集合無意識」の解説ページはこちら

人類には、気が遠くなるほどの長い歴史の中で、ほぼ全ての人々が見てきたことや体験してきた共通のことがあります。
例えば、月、太陽、風、大地、などはもちろんのこと、母性の中で成長していくこと、隣人と助け合うこと、働くこと、争うことなどは、何千年、何万年の規模で親から子ども、またその子どもへと繰り返し経験してきています。

集合無意識とは、時代や人種などには関係なく、全ての人類が体験してきた事柄の集合体として成り立っていると思われ、だれしもに共通に備わっていると考えられている普遍的な無意識の領域のことを言います。

そこで、まだ世界が未開であった時代、人類がまだ原始的な生活を送っていた太古の昔から、今日まで続いている職業とはなにか? について考えてみましょう。

男性は狩人や農業、漁業、大工などが挙げられます。
それらの仕事は男性的な心の働き(主に、知的な判断力や自立性、決断力、発言力、論理性、忍耐力、合理性、創造性、客観性、意識性など)と関係しています。

そして、太古の昔から続いている女性の仕事は、子育てはもちろんですが、男たちが採ってきた食料を保存したり調理することと、そしてもう一つの大切な仕事は、獣の毛皮などを仕立てたり、衣服類として縫うことが挙げられます。

それらの作業は女性的な心の働き(主に、感情の豊かさ、他人との関係性、恵み深さ、優しさ、柔らかさ、身体性、包容力、受身の姿勢、自然性、無意識性など)と関係しています。

衣服類を仕立てること、あるいは針と糸で縫うという仕事は、人類の歴史でも相当古くから存在しており、それはどんなに少なめに考えても、1万年前にはとっくに女性の基本的な職業となっていました。

衣服類などを縫う仕事は、親や仕事場の先輩などによって代々受け継がれてきており、気が遠くなるほどの長い時間を経て現在まで続いてきています。
そして人間の歴史が続く限り、それは今後も受け継がれていくものと思われます。

それだけ「縫う」という作業は、人類全体において、女性の基本的で大切な行動のパターンであり、それは私たち個人のレベルにおいても、普遍的なイメージの集合体を持っていると考えられます。

フロイトは夢を古代からの残存物と呼び、ユングは夢を原始心像(あるいは元型的イメージ)のあらわれだと言いました。

そして今回、yuri様に送って頂いたこの夢は、そのような心の深い、集合的な無意識の領域から生じたエネルギーが、個人的な心の層を通してあらわれており、「縫う」という心像を中心に、夢の文脈が形成されているように見受けられます。

それでは、今回のこの夢の中では、一体、yuri様のなにを縫い合わせていたのでしょうか?

ユング博士による分析心理学を日本に紹介した河合隼雄先生は、「昔話の深層」という本の中で、グリム童話のいばら姫(眠りの森の美女)について言及しています。

古くから伝わるこの昔話には、お城にいたお姫さまが、麻糸を紡いでいる老婆に出会う場面が登場します。
そこでお姫さまは、糸を紡いでいる老婆が使っていた針に指を刺されてしまい、その結果、お姫さまは100年の深い眠りについてしまいます。

河合先生はこの場面について、「老婆が紡いでいた糸は、お姫さまの運命をあやつるもの」と解釈しています。
先生はこの場面を「思春期の女性の成長のための試練」と考え、お姫さまはその運命の糸を紡ぐための針に触れることによって、お城ごと100年の眠りに陥ります。

このエピソードからも分かるように、昔話や個人の夢に登場する「縫う作業」は、決して避けることの出来ない大きな何らかの運命、といったイメージや、あるいは、これまで歩んできた人生の足跡に大きく関わっているような、何らかの観念や感情の糸を縫っている、という意味合いがあると思われます。

夢の中の縫う練習は、心の深い部分に溜め込んできた、様々な感情や観念の複合体をたぐり寄せ、縫い合わせ、あるいは紡ぎ出してそれを何らかの形にしようとしている心の働きを象徴しているのだと思われます。

そして、そんな運針練習を頑張っているyuri様は、Uさんの優しい言葉によって、涙があふれてきます。

つまり、夢の中のこの場面には、以下のような意味合いがありそうです。

私が今まで歩んできた人生の道のりには、様々な運命的な出来事があったけど、今までの辛いことも楽しいこともすべて総合して、そんな感情体験の「心の糸を縫い合わせる練習」をしている。
まだ練習している段階なので、真っ直ぐにしか縫うことが出来ず上手ではないけど、きっとこれから、この糸を何らかの形にする作業が上手になっていくはず。
始めたばかりで今はまだしんどいけど、運命的な心の糸を縫い合わせていき、だんだん形にしていけば楽になってくるから…

そのため、夢のなかで、安心して涙があふれてきたのではないかと思います。

いかが思いますでしょうか?

もう少し詳しく解釈するために、幾つか質問させて頂いても宜しいでしょうか?

質問1)
確認ですが、白いさらしに黒の糸で真っ直ぐ縫えるようにする練習をしているときに、涙を流し、その次の場面では、白とは別に紫色の生地を縫っていた、ということで宜しいのでしょうか?
また、このときの薄すぎた糸の色とはどのような色か覚えていますでしょうか?

yuri 様

送っていただいた解釈内容を興味深く読ませていただきました。
ありがとうございます。
先に質問に答えさせていただきます。

場面については、今回のメールにも書いていますが、白いさらしに黒の糸で真っ直ぐ縫えるようにする練習をしている後が、紫の生地を縫っているか涙を流すかの順番の記憶が曖昧になっています。
薄すぎた糸の色は、生地の紫色より薄い紫色です。
糸の色の選び方が、生地の色より少し薄い色がいいと習った気がしたのですが、夢の中でそれでよかったか自信がなくなり、もう一度、ちゃんと教えてもらいたいなと思いました。



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