心理学事典「グレードマザー太母」

  
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心理学事典「グレードマザー太母」


現実の母親や祖母、あるいは老婆や魔女などの心像が夢にあらわれた場合、グレートマザーの元型がモチーフ(その心像を生み出した動機)となっていると考えられます。
また、グレートマザーの心像があらわれているグリム童話に「ヘンゼルとグレーテル」や「トルーデさん」などがあり、またフィレンツェのフレスコ画「慈悲の聖母」もそのなかに数えられます。

すべての人は女性から産まれ、ほとんどの人は女性の手によって育てられます。
それは生物学的なレベルにおいて太古の昔から永遠のように続いてきており、想像もつかないほどの長い年月の間に、「母親とはどのようなものであるのか?」というイメージの集合体は、わたし達、個人個人の普遍的な無意識にしっかりと根付いているようです。
元型とは、その人の個人的な経験に依存することなく、生まれつき持ち備えているものですので、例えば、母親の顔を知らずに父親に育てられたと言う人でも、「母とはどのようなものであるのか」というイメージをきちんと持っているものです。
そして、太母の元型的なイメージは、「包み込むような絶対的な優しさと安心感のある」ものであり、基本的に、幼い子どもはこの元型的な働きを実在の母親の上に見てとります。
また、太母の元型には両面性があり、その基本的な特性は、「包含(ほうがん)する」というところにありますが、肯定的な面は、「抱く」「育てる」「生」であり、否定的な面は、「掴む」「呑み込む」「死に追いやる」という特性です。
この否定的で恐ろしい特性は、例えばグリム童話のヘンゼルとグレーテルに出てくる魔女が代表的で、森に住むこの魔女は、二人の子供をお菓子の家という甘い誘惑によって捕らえ、掴み込んでしまい、死の危険へと誘い込みます。
子供は、この元型に飲み込まれてしまっていては自我を確立することはできないので、子供や青年は夢の中で魔女や怪獣、怪魚やドラゴンなどと戦い、太母の元型からの自立というテーマの夢を見ることがあります。
また、夢の中に実在する母親が現れたとき、それはどの程度、元型的な心像であり、どの程度、個人的なその母親のイメージであるのかを判断することは難しいのですが、夢のストーリーが、上に記した特性がはっきり含まれていれば、それは元型的な太母の心像であり、夢の中の母親に自分しかしらないような個人的な要素が含まれていれば、それは、元型的な要素の薄いものと考えることができます。
太母の元型は、実在の母親以外では、祖母や老婆、魔女やドラゴン、女神や鬼婆、あるいは、土や渦巻き、海などの像によってあらわされます。

不思議と、お客様から頂いた夢の中で、グレートマザーの元型と関係があると解釈できる夢はとても少ない状況です。
夢の中で個々に、「これは太母の心像かも知れない」と思えるものはあっても、「竜退治」のような、太母との対決がテーマとなっていると思われる夢はいまのところ見当たりませんし、「包含(ほうがん)する」という機能を軸に、「抱く」「育てる」「生」あるいは、「掴む」「呑み込む」「死に追いやる」という太母の典型的な文脈を持つ夢を見つけることも、不思議と出来ずにいます。

なぜかははっきりとは分かりませんが(私がグレートマザーの心像を見逃している可能性の他に)理由として以下のことが考えられます。
おそらく、太母の問題を持っている方は、大きく分けて二通りあり、一つは、いままで母親の言うとおりにしてきた子供が、心理的な自立をかけて太母との対決をすべき年齢の時期にある若い方です。ですが、この時期といのは、思春期に多く、そのときは外的な適応に精一杯なのでそもそも心理学にまで興味が働かずに、このサイトにまでたどり着かないためではないかと思われます。
もう一つは、太母の問題を抱えている方は、「自分の家庭を作ること」、「いまの家族を大切にすること」あるいは、「母親との関係」よりも、仕事などに大きな価値を認めているようなタイプに多く、それは、母性的な元型的生命力が枯渇しており、あまりにも無意識的となってしまっている場合にあります。
このような心の状況のとき、人はだれでも母性の問題を夢に見やすいものですが、そのような方は、内的な心そのものよりも外的な現実に関心がある場合が多いと思われます。そのような人もまた、そもそも心理学や夢の解釈に関心を示さないのではないかと思われます。

以上のことが太母の夢の投稿が少ない理由かは、はっきりとは分かりませんが、残念ながら、このサイトからグレートマザーについの夢を研究することは難しいかも知れません。



睡眠時の「夢」のメカニズム